- ドッグマッサージ・整体・メディセルの違いがよく分からない
- うちの子にはどれが向いているのか知りたい
- 走る練習だけでなく、回復ケアもきちんと考えたい
ドッグマッサージ・整体・メディセルは競合する選択肢ではなく、深さの異なるケアの層です。普段は自宅マッサージ、月1回程度プロの施術、体の変化が気になる時期にメディセルも検討する、という役割分担が現実的です。整体・メディセルは査読研究による効果の裏付けがまだ乏しい分野であるため、本文中でその点を明記しています。
なぜ「休むこと・ほぐすこと」が走力に直結するのか
ローツェ思いっきり走ることばかり注目されがちだけど、実は体をほぐす時間もトレーニングの一部なんだよ。
犬の走力は、筋肉量や心肺機能だけで決まるわけではありません。トップスピードを何度も安定して出し続けるためには、走った後にきちんと回復できているかどうかが大きく影響します。散歩のような低強度の運動(LISS)は、スピード低下の真犯人とされる「神経系の疲労」の回復を助けることが分かっています。マッサージ・整体・メディセルも、アプローチの方法こそ違いますが、狙いは同じで、筋肉や神経、血液・リンパの流れを整えて「次に走るための準備状態」を作ることにあります。
犬の筋肉には「筋膜」と呼ばれる薄い膜が全身を覆っており、激しい運動や同じ姿勢の繰り返しによってこの筋膜が硬くなったり、部分的に癒着したりすることがあると獣医学領域でも紹介されています。筋膜が硬くなると、可動域が狭まり、本来の走りのフォームが崩れる原因になり得ます。ここで紹介する3つの方法は、いずれもこの筋肉・筋膜へのアプローチという点で共通しています。
ただし、犬に対するマッサージや手技療法の研究自体は、人間ほど蓄積されていません。2022年に発表された伴侶動物・スポーツ動物向けの徒手療法(ソフトティッシュモビライゼーション)に関する系統的レビューでは、現時点でのエビデンスは臨床的な有効性を明確に定義できるほど強くはないと結論づけられています。つまり「絶対に効果がある」と断定できる段階ではなく、「予備的に良い結果が報告されているが、まだ研究の途上にある分野」として理解しておくのが正確です。
一方で、英国の獣医師会公式誌であるVeterinary Recordに2021年に掲載された研究では、獣医師からの紹介で施術を受けた犬527頭のうち492頭分のケースノートを分析した結果、施術1回目から可動性や行動面での改善が報告され、回数を重ねるごとにその傾向が強まったことが示されています。対照群を置いた二重盲検試験ではなく、飼い主・施術者の主観的な報告に基づく横断研究という限界はあるものの、マッサージ療法が犬の筋骨格系の痛みを和らげる可能性を示す、数少ない査読済み研究の一つです。
ヌプツェ研究がまだ少ない分野もあるみたいだから、良さそうって聞いてもすぐに飛びつかず、ちゃんと調べてから試すのが大事だね。
①ドッグマッサージ|自宅ケアと、プロの技(流派)の違い
ヌプツェ自宅でのマッサージと、プロにお願いするマッサージって、実は全然違うものなんだね。
ドッグマッサージには、大きく分けて「飼い主さんが自宅で行うもの」と「資格を持つプロのセラピストが行うもの」の2層があります。
自宅で行うマッサージは、飼い主さんが日常的なスキンシップの延長として、優しく撫でるように筋肉をほぐす方法です。具体的なやり方や実施タイミングは、以下の記事で詳しく解説しています。
一方、プロのドッグマッサージセラピストは、犬の解剖学や生理学を学んだ上で、体系化された技法(流派)を使って施術します。代表的な流派の一つが「スウェーデン式ドッグマッサージ」です。これはもともとスウェーデンで馬のリハビリ・健康維持のために行われていた理学療法をルーツとし、解剖学に基づいて犬の筋肉や骨格に整形外科的にアプローチする技法とされています。力を込めて押すのではなく、犬の骨格や筋肉の構造を理解した上で、手だけを使って負担をかけずに働きかけるのが特徴だと紹介されています。このほかにも、特定の圧痛点にアプローチする「トリガーポイントセラピー」、運動能力の高い犬向けの「スポーツマッサージ」、指圧に近い「アクプレッシャー」など、海外の資格プログラムでは複数の技法が体系的に教えられています。
日本国内にも、こうしたドッグマッサージセラピストを養成する民間資格団体がいくつか存在します。日本ペットマッサージ協会(JPMA)は、解剖学や東洋医学、リンパ理論、症状別の実践テクニックまで学べるカリキュラムを、国際基準に準じた形で提供しているとされています。ほかにも、JADP認定ペットセラピストや、パーシヴ・ドッグマッサージ(PDMH)のように、それぞれ独自の技法体系を掲げるスクールがあります。ここで重要なのは、ドッグマッサージセラピストには国家資格が存在せず、いずれも民間資格であるという点です。技法や品質はスクールによって差があるため、依頼する際はカリキュラムの内容や実績を確認することをおすすめします。
ローツェ資格を持つ人にお願いするときは、どんな流派を学んだ人なのか、ちょっと聞いてみるのも良さそうだね。
②犬の整体|施術内容・資格制度・料金相場
ローツェ整体は骨や関節のバランスを整えるためのものなんだって。マッサージとは目的が違うんだね。
「整体」は、マッサージが主に筋肉・筋膜へのアプローチであるのに対し、骨格や関節のバランスを調整することを目的とする施術です。全身の筋肉をほぐして血液やリンパの流れを促し、体の機能バランスを整えることで自然治癒力を高める、という考え方に基づいています。
日本国内でドッグ整体師を養成している団体の一つに、一般社団法人日本ドッグ予防医学指導協会(JIPDA)があります。JIPDA公式サイトによれば、正規のドッグ整体師になるには、公認インストラクターが運営するスクールで規定のカリキュラムを修了し、検定試験に合格する必要があります。ドッグ整体師養成コースの受講費は認定試験料・教材費込みで1,022,400円、別途協会登録費35,000円がかかり、総額は1,057,400円(税込)とされています。このことからも分かる通り、正規のルートで整体師になるにはそれなりの専門教育が必要とされている分野です。施術料金の相場は1回あたり1万円から2万円程度、施術時間は60分程度とするサロンが多いとされています。
ここで必ず押さえておきたいのが、整体には明確な禁忌(やってはいけないケース)が存在するという点です。米国獣医師会(AVMA)の方針では、動物への整体的な施術は獣医師の診断・監督のもとで行われるべきであり、骨折・腫瘍・開放創がある場合は絶対的な禁忌に該当するとされています。日本国内でも、無資格の施術者が解剖学的な構造を無視した強すぎる力を加え、体を痛めてしまうケースが増えているとの指摘があります。犬の整体はあくまで健康な状態の筋肉をほぐし柔軟性を高めることが目的であり、既にケガや病気が疑われる場合の治療行為ではありません。体に異変を感じたら、整体ではなくまず獣医師の診察を受けることが大前提です。
なお、整体もドッグマッサージ同様、国家資格ではなく民間資格です。JIPDA以外にも複数の団体・スクールが存在し、技法や考え方に違いがあるため、依頼前に施術者の資格・実績を確認することをおすすめします。
ヌプツェ骨折とか腫瘍があるときは整体NGなんだって。体の異変を感じたら、まずは病院が先だよね。
③メディセル|筋膜を吸引してケアする最新デバイス
ヌプツェメディセルは吸引する機械を使うケアなんだって。マッサージや整体とはまた違うアプローチだね。
メディセルは、もともと人間の美容業界で使われていた筋膜吸引デバイスを、犬向けに応用した比較的新しいケア方法です。専用の機器で皮膚を優しく吸引することで、癒着した筋膜を緩め、血液・リンパの流れを促すことを目的としています。施術時間は20〜30分程度で、痛みを伴わない安全なケアとして紹介されています。
現在、トリミングサロンやペットホテルの一部で「メディセルペッツ」といった名称で導入が進んでおり、初回はトリミングやホテル利用済みの犬に限り無料お試しができるサロンもあるようです。運動量が減りがちなシニア犬において、筋膜の癒着による循環不良を改善し、体本来の機能を取り戻す目的で開発されたとされ、脊髄損傷後の犬が神経のつながりを取り戻した、階段を再び上れるようになったといった事例も紹介されています。
ただし、メディセルについても、整体と同様に査読を経た学術研究による効果の裏付けは、この記事の執筆時点では確認できていません。サロン側が紹介する事例や体験談は参考にはなりますが、あくまで個別の症例報告に近い性質のものである点は理解しておく必要があります。「筋膜をほぐす」という発想自体はドッグマッサージや整体とも共通していますが、専用機器を使うという点、そしてトリミングサロン発祥で美容・グルーミングの延長線上にあるサービスという点が、他の2つとの大きな違いです。導入しているサロンの多くは、トリミングやペットホテルの利用者向けに案内している段階であり、単独メニューとして広く一般化しているわけではない点にも注意してください。
ローツェまだ新しいケア方法だから、効果の研究はこれからみたい。サロンの人にしっかり説明してもらうのが安心だね。
3つを比較する
| 項目 | 自宅マッサージ | プロのドッグマッサージ | 犬の整体 | メディセル |
| 実施者 | 飼い主さん本人 | 民間資格を持つセラピスト | 民間資格を持つ整体師 | サロンスタッフ(専用機器使用) |
| 主な技法・流派 | 決まった型はない | スウェーデン式・スポーツマッサージ等 | JIPDA式など | メーカー指定の吸引デバイス |
| 資格の要否 | 不要 | 民間資格(JPMA/JADP/PDMH等) | 民間資格(JIPDA等) | サロン独自の講習が中心 |
| 主な目的 | 日常のスキンシップ・リラックス | 筋肉・循環への専門的アプローチ | 骨格・関節バランスの調整 | 筋膜の癒着解消(吸引) |
| 科学的エビデンス | 予備的な報告あり(限定的) | 予備的な報告あり(限定的) | 査読研究は確認できず | 査読研究は確認できず |
| 料金の目安 | 無料(自宅で実施) | サロンにより変動 | 1回1万〜2万円程度/60分 | サロンにより変動(お試し無料の例あり) |
| 向いている場面 | 日常のスキンシップ全般 | 定期的な専門ケアをしたい時 | 骨格バランスが気になる時 | 循環不良・シニア期のケアを検討したい時 |

こうして並べてみると、3つは対立する選択肢ではなく、深さと専門性の異なるレイヤーであることが分かります。自宅マッサージは毎日でも無理なくできる基礎ケア、整体・プロのマッサージ・メディセルは、そこに専門的な視点を加える「一段深いケア」という位置づけで考えると整理しやすくなります。
週間トレーニングメニューへの組み込み方(例)
ローツェ普段は自宅ケア、たまにプロにお願いする、みたいに組み合わせるのが現実的なんだね。
実際にルアーコーシングに参戦している犬の場合、走る練習と回復ケアを1週間の中でどう組み合わせるかが重要になります。あくまで一例ですが、以下のような組み込み方が考えられます。

大会前日・当日のケアは、以下の記事もあわせて参考にしてください。回復ケアもトレーニングメニューの一部として組み込むことで、走る練習だけに偏らない、体全体を長く使い続けるためのケア習慣が作れます。
ヌプツェ大会の後だけじゃなくて、普段のケアも走りにつながってるんだって思うと、毎日のスキンシップも頑張れそう。
自宅マッサージをするときは、こうしたグッズを使うと手が滑りやすく続けやすくなります。「マッスルマジック」は、運動後の筋肉ケアローションとして使えるアイテムです。
こんな症状が見られたら、まず動物病院へ
マッサージ・整体・メディセルは、いずれも健康な体をより良い状態に整えるためのケアであり、病気やケガの治療ではありません。以下のようなサインが見られる場合は、施術を受ける前に、まず動物病院を受診してください。
- 特定の脚を庇う、または引きずるような歩き方をしている
- 触られるのを痛がって鳴く、噛もうとする
- 急激な体重減少や、明らかな左右非対称の腫れがある
- 骨折・脱臼・開放創など、外傷がある(または疑われる)
- 熱っぽい、元気や食欲が急激に落ちている
これらは、米国獣医師会が示す整体の絶対的禁忌(骨折・腫瘍・開放創など)にも重なる内容です。「何かおかしいけれど、とりあえずマッサージで様子を見よう」という判断は避け、異変を感じたら専門家である獣医師の診断を優先してください。
ローツェ体に異変があるときは、マッサージとかより先に、病院に連れて行ってもらうのが一番だよね。
うちの子はどれが向いている?チェックリスト

よくある質問
- マッサージ・整体・メディセルは、併用しても問題ないですか?
-
併用自体を禁止する情報は確認できませんでした。
ただし同じ日に強い刺激を複数重ねると体への負担が大きくなる可能性があるため、実施する場合は日をずらす、施術者に併用の旨を伝えるなど、無理のない範囲で組み合わせることをおすすめします。 - 整体やメディセルは、獣医師の代わりになりますか?
-
なりません。
いずれも健康な体を整えるためのケアであり、診断や治療行為ではありません。体調不良やケガが疑われる場合は、必ず動物病院を受診してください。 - 自宅マッサージだけでも十分ですか?
-
日常のケアとしては十分に価値がありますが、専門的な技法によるアプローチとは目的が異なります。
「まずは自宅マッサージから始めて、必要に応じてプロの施術を検討する」という段階的な考え方がおすすめです。 - スウェーデン式ドッグマッサージは、どこで受けられますか?
-
JPMAやドッグケアインターナショナルなど、複数の民間資格団体・スクールがスウェーデン式をベースにした技法を教えています。
受講したセラピストが個別にサロンを開業している場合もあるため、地域名とあわせて検索してみることをおすすめします。 - メディセルは日本国内でどのくらい普及していますか?
-
この記事の執筆時点で、トリミングサロンやペットホテルの一部が導入していることは確認できました。
ただし、全国的な普及率などの統計データは確認できていません。
まとめ
ルアーコーシングのようなスピード競技では、走る練習にばかり注目が集まりがちですが、走った後の体をどうケアするかも、同じくらい重要なトレーニングの一部です。自宅マッサージ、プロのドッグマッサージ、整体、メディセル、それぞれ目的と専門性の深さが異なるため、優劣で比較するのではなく、普段のケアと専門的なケアを組み合わせる発想で取り入れることをおすすめします。ただし、整体・メディセルについては査読研究による効果の裏付けがまだ乏しい分野であること、そしていずれの施術も国家資格ではなく民間資格に基づくものであることを理解した上で、施術者の実績を確認してから利用することが大切です。そして何より、体に異変を感じたときは、施術を検討する前にまず動物病院を受診してください。
出典・参考情報
この記事は、以下の情報に基づいて執筆しています。
- Riley, L.M., Satchell, L., Stilwell, L.M., Lenton, N.S. (2021) “Effect of massage therapy on pain and quality of life in dogs: A cross sectional study”, Veterinary Record(英国獣医師会公式誌):bvajournals.onlinelibrary.wiley.com
- 「A Systematic Review of Complementary and Alternative Veterinary Medicine in Sport and Companion Animals: Soft Tissue Mobilization」(2022), PMC:ncbi.nlm.nih.gov
- 「Introduction to Myofascial Trigger Points in Dogs」, ScienceDirect:sciencedirect.com
- American Veterinary Medical Association「AVMA Policies」(動物の整体的施術に関する方針):avma.org
- 一般社団法人日本ドッグ予防医学指導協会(JIPDA)公式サイト:dog-yobouigaku.or.jp
- JIPDA認定資格講座 費用一覧:dog-yobouigaku.or.jp/qualification
- 一般社団法人日本ペットマッサージ協会(JPMA)公式サイト:j-pma.com
- ドッグケアインターナショナル マッサージスクール公式サイト:dogcare-msg.com
- JCGソリューションズ「メディセルペッツ」紹介ページ:jcg-solutions.jp







