- 避難所に愛犬を連れて行けるのか分からない
- 防災グッズ、何から揃えればいいのか分からない
- うちは多頭飼いだから、避難がもっと大変な気がする
ペットとの同行避難は、当たり前に用意されている権利ではなく、飼い主さんが平常時から準備していることが前提の仕組みです。環境省のガイドラインを正しく理解し、優先度別のグッズを備え、クレートに慣れさせておくこと。多頭飼いなら「1人1頭」の原則を徹底すること。この4点が、災害時に愛犬と離れ離れにならないための最初の一歩です。
結論:ペット同行避難は「当たり前の権利」ではなく「事前の準備」が前提
ローツェ最近ニュースで地震や水害の話をよく聞くから、パパと一緒に防災グッズを見直してみたんだ。
「災害が起きたら、ペットと一緒に避難所に行けるはず」と考えている飼い主さんは多いと思います。しかし、これは誤解を含んでいます。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」(2018年2月改定、初版2013年6月)では、飼い主さんがペットを連れて安全な場所まで移動する行動を「同行避難」と定義していますが、同行避難ができるかどうかは、平常時にどれだけ準備をしていたかに大きく左右されます。
具体的には、①フードや水などの備蓄、②マイクロチップや迷子札による身元確認、③キャリーやクレートに慣れていること、④多頭飼いの場合はリード管理の準備、といった要素です。これらが整っていないと、いざというときに愛犬を連れて安全に避難することが難しくなります。この記事では、この4点を中心に、今日からできる具体的な準備を解説していきます。
「防災」と聞くと大掛かりな準備を想像してしまいがちですが、実際には、今日決めた「1つの担当」や、今日クレートの扉を開けておくといった小さな行動の積み重ねが、災害時に愛犬を守る力になります。まずは肩の力を抜いて、この記事を読み進めてみてください。
ヌプツェこの記事は最後までしっかり読んでほしいな。特に多頭飼いの章は私たちの実例も出てくるよ!
なぜ「うちは大丈夫」が一番危険なのか(データで見る現実)
ヌプツェ「うちは大丈夫」って思っている飼い主さん、実は多いんだって。データを見てみようよ。
一般社団法人ペットフード協会が実施した「全国犬猫飼育実態調査」(2024年)によると、犬の飼い主さんのうち、リード・ハーネスの用意、フードの備蓄、キャリーバッグ・ケージの用意といった防災対策を実施している割合は、いずれも3〜4割程度にとどまっています。つまり、半数以上の飼い主さんが、これらの基本的な備えをまだしていないという現状があります。
また、なぜ備えが進まないのかを考えるうえで参考になる研究として、Hunt, Bogue, Rohrbaughによる論文「Pet Ownership and Evacuation Prior to Hurricane Irene」(Animals誌、2012年)があります。この研究では、ペットを飼っていることが避難失敗の統計的な危険因子ではなかったという結果が出ましたが、避難しなかったペット所有者のうち51%が「ペット関連の理由」を避難しなかった理由として挙げていました。この論文はサンプル数が117名と少なく、対象者が経済的に比較的恵まれた層に偏っていたという限界が著者自身によって指摘されているため、この結果をそのまま日本の状況に当てはめて断定することはできません。ただ、「ペットがいることで避難の判断が難しくなる」という傾向自体は、日本国内でも十分に想定される課題だと考えられます。
「うちは大丈夫」ではなく、「備えていないのが実は普通」という前提に立って、今日から一つずつ準備を進めていくことが大切です。
同じ調査では、最寄りの避難所がペットの受け入れを行っているかどうかを知っている飼い主さんの割合も低いことが報告されています。つまり「モノを備えていない」だけでなく、「制度を知らない」という2つの遅れが同時に起きているのが現状です。
特にルアーコーシングのように遠征や車移動が多い競技犬の家庭では、日頃から荷物の準備に慣れているぶん、「大会用の道具はいつも完璧に用意しているのに、防災用の備えは手つかず」というギャップが生まれやすい傾向があります。大会遠征の持ち物リストを見直すタイミングで、防災グッズも一緒に点検してしまうのが、忘れずに済む一つのコツです。
ローツェ私たちも、この記事を書くためにパパと一緒に防災グッズを見直したんだよ。大会の遠征グッズは完璧だったのに、防災グッズはまだ足りないものがたくさんあって、ちょっとびっくりした。
同行避難と同伴避難、正しく理解していますか?
ローツェ「同行避難」と「同伴避難」、似ている言葉だけど意味が全然違うんだよ。
環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」では、この2つの言葉が明確に区別されています。
- 同行避難:災害の発生時に、飼い主さんがペットを連れて、指定緊急避難場所等まで一緺に移動する避難行動そのものを指す
- 同伴避難:避難所などで、被災者がペットを飼養管理している状態を指す(内閣府「避難所運営ガイドライン」で使われた用語)
ここで重要なのは、「同伴避難ができる=避難所でペットと同室で過ごせる」という意味ではない、という点です。多くの避難所では、ペットは指定されたスペース(屋外や別室)で管理されることになっており、人間の避難スペースとは分けられているのが一般的です。この違いを知らずに避難所へ向かうと、想定していた形で愛犬と過ごせず、不安が大きくなってしまう可能性があります。
お住まいの自治体が、ペットの受け入れについてどのような方針を取っているかは、事前にホームページや広報で確認しておくことをおすすめします。環境省は、令和3年に「人とペットの災害対策ガイドライン 災害への備えチェックリスト」を公表し、各自治体が避難所におけるペットの受け入れの可否をあらかじめ公表する方針を示しています。「うちの地域の避難所は、ペットをどう扱うことになっているか」を、災害が起きる前に一度調べておくだけで、いざというときの迷いがかなり減ります。
ヌプツェ住んでいる場所の避難所がどうなってるか、ママに聞いてみたら「まだ確認してなかった」って言ってた。人間も一緒に確認しておいた方がいいね。
地震と水害、備えるものに違いはある?
ローツェ地震と水害って、避難のタイミングも準備するものも、実はちょっと違うんだって。
地震は前触れなく発生するため、フード・水・キャリーなどの防災グッズを「すぐに持ち出せる場所」にまとめておくことが特に重要になります。停電や断水、道路の寸断が同時に起こる可能性があるため、備蓄は最低5〜7日分、できれば2週間分を目安に用意しておくと安心です。また、家具の転倒でクレートやケージが壊れたり、犬がパニックになって逃げ出したりするリスクもあるため、普段の生活スペースの安全確保も防災の一部と考えられます。
一方、大雨による水害(洪水・浸水)は、気象情報や河川の水位情報である程度の予測ができるという特徴があります。つまり、地震に比べて「早めに動く」判断ができる場合が多いということです。浸水が想定される地域に住んでいる場合は、警戒レベルの情報が出た段階で、フード・水・キャリーなど最低限の防災グッズをすぐに車や避難バッグに入れられる状態にしておき、早めの避難を検討することが推奨されています。1階で飼育している場合は、浸水前に2階など高い場所へ犬を移動させる、というのも水害特有の備えです。
どちらの災害でも共通しているのは、「フード・水・キャリー・身元確認」という基本の備えが土台になる、という点です。次の章では、この基本の備えを優先度別に具体的に整理していきます。
ヌプツェ地震はいつ来るか分からないから常に準備、水害は早めに動く、って覚えておくね。
今日から始める!優先度別・防災グッズチェックリスト
ヌプツェここからは実践編!何をどれくらい揃えればいいか、優先度別に整理してみたよ。
米国疾病予防管理センター(CDC)の「Healthy Pets, Healthy People」では、ペット用の防災キットとして、フード・水を2週間分用意することが推奨されています。また、米国獣医師会(AVMA)の「Save the Whole Family」でも、輸送手段・身元確認・避難用キットの3点が基本要素として挙げられています。これらを踏まえ、優先度別に整理すると以下のようになります。
| 優先度 | 備えるもの | ポイント |
| 1(命に関わる) | フード・水(5〜7日分以上)、常備薬・療法食、キャリー・クレート | 療法食は入手困難になりやすいため多めに備蓄 |
| 2(身元確認) | マイクロチップ・迷子札、狂犬病・ワクチン接種証明書、写真 | はぐれた際に再会できる可能性を上げる |
| 3(その他) | リード・ハーネスの予備、排泄用品、タオル・ブランケット | 避難生活が長引いた場合の負担を減らす |
特に優先度1の「キャリー・クレート」は、体を保護するだけでなく、次の章で説明する「同室で過ごせない避難所」でも愛犬が落ち着いて過ごせる場所になります。サイズ選びは、体重だけで判断せず、高さ(頭頂部+2〜5cm)・奥行(体長+10〜15cm)・幅(肩幅の2.5〜3倍)という寸法で決めるのが安全です。ウィペットのような細身の犬種は、一般的な「体重別サイズ表」がそのまま当てはまらないことがあるため、詳しい決め方は以下の記事で解説しています。
私たちの家では、実際に車移動用として使っているクレート(幅46×奥行63×高さ50cm)を、防災用としてもそのまま活用しています。
クレートは用意するだけでなく、日頃から慣れさせておくこと、そして寝床として使う場合は覆い方にも工夫が必要です。慣れさせるための具体的なステップは次の章で解説します。寝床としてクレートを使う際の同室・別室の考え方や覆い方については、以下の記事もあわせて参考にしてください。
優先度2の「身元確認」も見落とされがちですが、はぐれてしまった愛犬と再会できる可能性を大きく左右します。マイクロチップに加えて、首輪に付ける迷子札があると、保護してくれた人がその場ですぐ連絡できます。
また、フード・水・薬は「備えて終わり」ではなく、賞味期限や使用期限が近づいたら普段の食事で消費し、新しいものを買い足す「ローリングストック」の考え方を取り入れると、備蓄を無駄にせず、常に新しい状態を保つことができます。半年に一度、防災グッズの中身を見直す日をカレンダーに登録しておくと、うっかり期限切れに気づかない、という事態を防げます。
ローツェこのクレート、大会の車移動でいつも使ってるのと同じサイズなんだよ。慣れてる場所だから、防災用としても安心なんだ。半年ごとの見直しの日も、もうカレンダーに入れてもらったんだ。
グッズを揃えるだけでは足りない。「クレートに慣れる」練習も防災の一部
ローツェクレートを買っても、いきなり閉じ込められたら誰でも嫌だよね。慣れる練習が大事なんだって。
環境省のガイドラインでは、平常時からキャリーやクレートに慣れさせておくことの重要性が示されています。具体的には、扉を開けた状態で普段から部屋に置き、犬が自由に出入りできる状態にしておくことが推奨されています。おやつやフードをクレートの中で与える方法も、慣れさせるうえで有効とされています。
災害はいつ起こるか分からないため、「必要になってから慣れさせる」のでは間に合いません。ガイドラインが示す慣らし方の基本ステップは、大きく分けると次のような流れになります。
- ステップ1:クレートの扉を開けたまま、普段のリビングなど生活スペースに置いておく
- ステップ2:クレートの中にお気に入りの毛布やタオルを敷き、居心地の良い場所にする
- ステップ3:おやつやフードをクレートの中に置き、自分から入ることを覚えさせる
- ステップ4:食事中など短い時間だけ、扉を閉めて過ごす練習をする
- ステップ5:徐々に扉を閉めておく時間を延ばし、外出時や就寝時にも使えるようにしていく
この流れを、災害が起きる前の「日常」の中で無理なく進めておくことが、実は一番効果的な防災対策の一つになります。クレートに慣れさせるための、より詳しい週齢別のステップや、鳴いて出す学習をさせないための工夫については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
ヌプツェ私たちは小さい頃からクレートに慣れてるから、車移動もレースの待機時間も平気なんだ。防災にもちゃんと役に立ってるんだね。
多頭飼い(ローツェ&ヌプツェ)だからこそ気をつけたいこと
ヌプツェ私たちみたいに2頭以上で暮らしてる家は、避難のときにもうひと工夫が必要なんだって。
多頭飼いの場合、災害時の避難は単純に「グッズを2倍用意すればいい」というだけでは済みません。特に注意すべきなのが、避難時のリード管理です。1人で複数頭のリードを同時に持つことは、被災時の混乱した状況の中では危険が大きく、犬が驚いて突然引っ張ったり、逆方向に走り出したりした場合、飼い主さん自身が転倒するリスクや、犬を制御できなくなるリスクが高まります。
そのため、基本の考え方は「1人1頭」です。家族の人数分だけ、担当する犬を事前に決めておく、あるいは1頭はキャリーバッグに入れて背負い、もう1頭はリードで歩かせるといった役割分担を、平常時からシミュレーションしておくことが大切です。多頭飼い全般の準備・注意点については、以下の記事もあわせてご覧ください。
私たちの家では、ローツェとヌプツェそれぞれに専用のキャリーとリードを用意し、家族のうち誰がどちらを担当するかを事前に決めています。実際に災害が起きたときに慌てないよう、月に一度、避難の動きを実際にシミュレーションする時間を作るようにしています。
また、多頭飼いの場合は、迷子札やマイクロチップの情報に加えて、それぞれの犬の写真・名前・特徴を1枚のカードにまとめておくこともおすすめです。避難所や動物病院で「どちらがどちらの犬か」を素早く説明できるようにしておくと、混乱した状況でも周囲の助けを得やすくなります。フードや薬も、犬ごとに分けて別の袋にまとめておくと、慌てているときでも間違えにくくなります。
ローツェ私はパパと一緒に歩く担当、ヌプツェはママと一緒に歩く担当って決めてるんだ。ヌプツェももう体格はほとんど変わらないから、2頭とも歩いて避難するよ。
まとめ:明日ではなく今日、一歩を
ローツェこの記事で紹介したこと、全部を一度にやらなくても大丈夫。まずは1つからでいいんだよ。
この記事では、環境省のガイドラインが定める「同行避難」と「同伴避難」の違い、優先度別の防災グッズチェックリスト、クレートに慣れさせておく重要性、そして多頭飼いならではの注意点について解説しました。ペットフード協会の調査が示すように、防災対策を実施している飼い主さんはまだ3〜4割程度です。裏を返せば、少し準備するだけで、多くの飼い主さんより一歩先に進むことができます。
地震や大雨による水害は、いつ・どこで起きるか分かりません。この記事を読んで「あ、これはまだやっていない」と思ったことが一つでもあれば、今日のうちに、その一つだけでも始めてみてください。クレートの扉を開けておく、迷子札を確認する、家族で担当を1つ決める。どれも数分でできることばかりです。小さな一歩の積み重ねが、いざというときに愛犬と離れ離れにならないための、一番確実な備えになります。
ヌプツェ私たちも今日、クレートの耐荷重を確認して、家族の避難シミュレーションをやってみたよ。みんなのおうちでも、ぜひ試してみてね。
よくある質問
- 避難所でペットと同じ部屋にいられますか?
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基本的には難しい場合が多いです。
「同伴避難=同室で過ごせる」という意味ではなく、多くの避難所ではペット専用のスペースが人間の避難スペースとは別に用意されます。事前に自治体の受け入れ方針を確認しておくことが重要です。 - フードはどれくらい備蓄すればいいですか?
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5〜7日分が一つの目安ですが、より安全を考えるなら2週間分が理想です。
米国CDCのガイドラインでは2週間分の備蓄が推奨されています。療法食を使っている場合は、災害時に入手が難しくなりやすいため、余裕を持った量を備えておくと安心です。 - 多頭飼いだと避難は諦めた方がいいのでしょうか?
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諦める必要はありませんが、平常時の役割分担の準備が特に重要になります。
「1人1頭」を基本に、家族の中で誰がどの犬を担当するかを事前に決めておき、実際にシミュレーションしておくことで、災害時の混乱をかなり減らすことができます。 - 防災グッズは季節ごとに見直した方がいいですか?
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はい、季節に合わせた見直しをおすすめします。
夏は熱中症対策の冷却グッズや飲水量の増加を、冬は防寒用の毛布や保温グッズを追加するなど、季節ごとに必要なものは変わります。フード・水の賞味期限確認と合わせて、季節の変わり目に点検する習慣をつけると管理しやすくなります。
科学的根拠・出典一覧
この記事は、以下の一次情報に基づいて執筆しています。
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(2018年2月改定、初版2013年6月)
- 米国獣医師会(AVMA)「Save the Whole Family: Disaster Preparedness for Households with Pets」
- 米国疾病予防管理センター(CDC)「Healthy Pets, Healthy People: Emergency Preparedness」
- Hunt, M. G., Bogue, K., & Rohrbaugh, N. (2012). Pet Ownership and Evacuation Prior to Hurricane Irene. Animals, 2(4), 529-539.
- 一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」(2024年)
ここまで読んで「まず何か一つ揃えるなら」と思ったら、記事内でも紹介したクレートから検討してみてください。





